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 赤い。今日の月は血のように赤い。
 妖艶な月光に包まれて、狂気の青い炎が夜空で踊る。



『さあ!今日のターゲットはなんと、指名手配中の連続殺人犯!すでに現場では、ヒーロー達と犯人との熾烈なカーチェイスが繰り広げられています!』

 強盗犯や逃亡犯との追いかけっこは絵になるからと、実況はここぞとばかりに盛り上げる。
 しかし実際は、交通量の多いシュテルンビルトの道路を、他の車の間を縫って行かねばならず、ヒーロー達は思ったよりも苦戦していた。
 本来ならば、先に警察が道路に規制を敷くのだが、今日は急な出動であった為にそれが間に合わなかった。
 市民たちは道をあけてくれているが、予測不能に走り回る犯人のバイクに振り回され続けていた。

「くそっ!キリがねぇな!」
「ここは私に任せてくれたまえ!」

 少し遅れて到着したスカイハイが、犯人の頭上高くまで追いついてきた。

「仕方ないな…頼んだぞ」
「私たちは警察の包囲網と合流しましょう」

 今日ばかりは、ポイント争いがどうのと、呑気に気にしていられる相手ではなかった。
 何人もの人を無差別に殺した指名手配犯。
 犯行が発覚するやいなや逃走し、もう何か月も警察が追い続けていた、極悪犯だ。
 相手は銃を所持しているらしいが、スカイハイにそんな事は関係なかった。
 ヒーロースーツは防弾チョッキの役割もあるし、風で弾道を逸らすこともできる。
 犯人の真上を、見失わないようにぴたりとついて飛ぶ。
 直線の道路を疾走していた犯人のバイクが、人気のない道に逸れた。

「いまだ!」

 その瞬間を逃さず、急降下する。
 犯人がスカイハイに気が付いた時には、彼の放った風がバイクを攫って、犯人の体は道路へ投げ出された。

「さあ、観念したまえ」

 衝撃で気を失った犯人を、スカイハイがつまみ上げる。

『やりました!スカイハイが犯人逮捕です!さすがはキング・オブ・ヒーロー…』

 興奮した実況が、途中で失速する。
 真っ先に気が付いたのは、その方向を向いていたヘリコプターのパイロットだった。
 思わず声を上げた彼につられて、カメラは犯人を確保するスカイハイよりも、そちらへ向けられる。
 嫌な気配を感じて、スカイハイは顔を上げた。
 この辺りで一番高いビルの、ちょうど屋上に、真っ赤な月が浮かんでいた。
 月光を背にうけて、たなびく白いマント。

『ルナティックです!ルナティックが現れました!』

 咄嗟にスカイハイは犯人を抱え、空へ舞いあがる。
 先ほどまでいたその場所に、青い炎を宿した矢が刺さった。

「そうはさせない!」

 とにかく早く、犯人を警察に引き渡さなければ。
 だが飛び去ろうとするスカイハイを、青い炎が遮った。
 一瞬怯んだ隙に、ルナティックがすぐそこまで迫ってきていた。

(早い…!)

 人ひとりを抱えて、ルナティックにどこまで応戦できるだろうか。
 だが、せめて他のヒーロー達や警察が来るまでは持ちこたえなければ。
 放たれた炎を寸前で避ける。

「はっ!」

 ありったけの風をぶつける。
 マントが炎で燃え上がり、ルナティックを守るように包み込んだ。

「無駄だ」

 スカイハイのスーツの裾が、僅かに焼け焦げていた。
 強力な炎には、防御性の高いスーツでも太刀打ちできないようだ。

「くっ…」
「君と私の能力では、相性が悪い」

 不気味な仮面の向こうで、嗤っているのがわかる。

「私にとっては好都合だが」

 至近距離からボウガンの先が犯人に向けられる。

「っ…やめろ!」
「!?」

 これ以上は埒が明かないと、スカイハイはルナティックの懐に飛び込んだ。
 炎を恐れることなく、ボウガンを持つ腕を掴む。

「そして、やめたまえ!いくら凶悪な殺人犯だろうと、殺しては…」

 ふと、奇妙な既視感を覚える。
 仮面ではない、隠されたその向こう。

「…君は…?」

 間近で見るその顔は、仮面に包まれてわからない。
 けれど、確かに何かを感じる。

「君は…」
「っ…!」

 掴まれた腕を振り払い、ルナティックは夜空へと消えていった。

『おっと!ルナティックを確保したかと思いましたが!?残念ながら逃げられてしまったようです』

 ライトが夜空にきらめき、スカイハイを照らし出す。
 ようやく到着した警察が、ルナティックを探して周囲の捜索をはじめた。
 だがすでにその姿は闇夜に消えていなくなっていた。



 翌日、

「あ」

 トレーニングルームへ向かう途中、偶然にもユーリとすれ違った。

「お久しぶりです、ユーリさん!」

 ユーリは軽く会釈をしただけで、そのまま通り過ぎようとした。
 構わず、その後を追いかける。

「最近は出動が多くて、貴方に会いに行く時間もなくて…また貴方の都合の良い日を教えてください」

 少し前に食事へ行って以来、キースは何度かユーリに声をかけるようになった。
 以前は突然事件に巻き込まれて、当初の目的ははたせないままに終わってしまった。
 その時の埋め合わせを、という口実で、何度も誘っているのだが、ユーリはなかなか首を縦に振らない。
 仕事が残っているとか先約があるとか、何かと理由をつけて断られていた。
 ユーリは呆れたように溜め息をつく。

「…貴方は随分と、諦めの悪い人ですね」
「言ったでしょう。今度私の行きつけの店に行きましょうと」
「約束をした覚えはありません」

 ユーリは少しも振り返ることなく、歩調を早めた。
 それでもキースは余裕の足取りで後を追う。
 今日のユーリはいつもより拒絶が強い。
 なぜだろう、とても機嫌が悪いように思う。

「待ってください」

 思わず、ユーリの腕を掴んだ。

「何か、あったのですか?」
「……………」
「今日のあなたは、なんだかとても…」

 そこでふと、キース奇妙な感覚に捕らわれた。
 どこかで感じたことのある、その感覚。

「っ…!」

 ユーリが乱暴に手を振り払った。

「あっ…すみません、失礼を」
「…急いでいるので、これで」

 最後までキースの顔を見ることなく、ユーリは逃げるように去って行った。
 キースは手の平を見つめた。
 折れそうな程細いユーリの腕の感触が手の平に残っている。

「不思議だ…そして、不思議だ」

 自分でも、こんなに何度もしつこく声をかけてしまう事を不思議に思う。
 彼が本当に迷惑がっているのならば即刻止めるが、そうではないようだから余計に諦められなくなる。
 気になっているのだろう、彼の…ユーリの事が。
 もっと話がしてみたい。もっと、彼の事を知りたい。
 いつのまにか、目的が変わっていた。
 当初の目的はすでにただの名目上のものになっている。
 ユーリともっと仲良くなれたらいい。

「きっと私たちはいい友人になれると思うよ…ユーリ」









キースは友情以上恋愛以下
ユーリは惚れかけてる(無自覚)

そんな状態です

今更だけど、お互いの呼び方は苗字の方が良かったんだろうか?
外国の方のその辺の事情は ワッカリマセーン